| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
一般講演(口頭発表) E01-03 (Oral presentation)
2014年6月に外来生物法の特定外来生物に指定された中南米原産のアカバナ科のLudwigia grandifloraは、亜種オオバナミズキンバイL. grandiflora ssp. gandifloraとウスゲオオバナミズキンバイL. grandiflora ssp. hexapetalaを含み、指定当時確認された兵庫県、和歌山県の個体は前者、滋賀県、鹿児島県の個体は後者に該当する。ここでは両者を合わせてオオバナミズキンバイとして扱う。
本種は、滋賀県琵琶湖岸では2009年に確認され周辺の河川・水路を含め急拡大し、船舶の航行や漁業に支障を及ぼし動植物への影響も懸念されたため、2013年度から始まった各種対策により、最大30haに達した生育面積は2019年度末には3.2haに減少した。鹿児島県では生育が確認された河川から周辺の農地へと侵入し、水田雑草化している。兵庫県と和歌山県での生育環境はため池であるが、前者では流出水路でも見つかり、封じ込めが急務である。
西日本に限られていた本種は、2015年以降、千葉県印旛沼で少数個体が確認され、その場で除去され続ける一方、2017年には茨城県霞ヶ浦と千葉県手賀沼でも発見された。霞ヶ浦では排水樋門の湖側に生育した群落が駆除され、その後も再生個体の駆除が継続されている。また、手賀沼では沼の西半分を中心に大繁茂し、先住のヒユ科の特定外来生物ナガエツルノゲイトウに置き換わるように増殖し、東日本最大の生育水域となっている。さらに西日本では、琵琶湖からの水が流下する京都府鴨川や大阪府淀川への分散の他、琵琶湖・淀川の水が供給されない大阪府下の農業水路やため池、河川などへも分布を拡大している。
本種は抽水性の水生植物ながら陸上でも生存できる強靭さと、種子繁殖と栄養繁殖による高い分散能力と速い成長速度を併せ持った侵略性が著しく高い外来植物であり、先行するフランスでは広範に拡がり1,000ha超の大群落も確認されている。今回は各地における対策を含めた現状を概観し、今後の課題を整理し展望する。