| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
一般講演(口頭発表) E01-05 (Oral presentation)
外来種が問題とされるのは、在来種の局所集団や個体群サイズの減少、分布域の縮小など、「個体数のレベル」で負の影響をもたらすと考えられているからである。しかし、在来種の個体数はさまざまな要因の影響を受け自然変動するため、たとえ外来種が、捕食や毒性により在来種の個体を殺すようなことがあっても、それが個体数レベルで本質的な効果を持つとは限らない。外来種が在来種に対して、真にインパクトをもつのか、個別の事例ごとに丹念な検証が必要である。私たちは、北海道の国内外来種アズマヒキガエルが在来両生類のエゾアカガエルとエゾサンショウウオに与える影響を調べてきた。過去に行った水槽実験では、孵化したばかりのアズマヒキガエルが在来種の幼生にとって有毒な餌であり、捕食すると死ぬ場合があることを確かめてきた。特に、エゾサンショウウオ幼生に比べエゾアカガエルのオタマジャクシに対する毒性効果が強く、その理由としては、エゾアカガエルの毒耐性の低さ、集合採餌や遺骸食いといったオタマジャクシ特有の採餌生態が関連していると考えられている。では、アズマヒキガエル孵化胚の毒性効果は野外においても実際に観察されるのだろうか? また、それは在来種の局所集団(池の幼生集団)に対してどれほどの効果を持つのか? これらの本質的な問いに答えるべく、3年間にわたって野外池での操作実験と調査を行ってきた。本発表ではその成果を報告する。