| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
一般講演(口頭発表) E01-08 (Oral presentation)
日本の森林では台風による自然撹乱が頻繁に発生し、経済や生態系に大きな影響を及ぼしている。人工林は特に風倒撹乱を受けやすく、国内では一般的に撹乱後の管理施業としてsalvage loggingや地ごしらえ、植栽が行われる。しかし、こうした施業が撹乱後の森林再生に与える長期的影響については未解明である上に、北海道では森林再生過程においてシカ採食圧が植物種構成や植物量に与える影響が甚大なため、施業そのものの影響と区別し定量的に評価する必要がある。加えて、salvage logging後に重機が走行し植栽が行われる植栽列と、重機が走行せず枝条や根株が列状に積み上げられる残渣列が生じるため、これら2つの環境について区別して評価する必要がある。そこで本研究では、風倒後15年が経過した人工林での自然林再生事業において、森林施業とその後のシカ採食圧がそれぞれ植物種構成、植物量に与える影響を区別して評価を行い、シカ採食圧が高い地域における大規模風倒撹乱後の管理方法について考察することを目的とした。
本研究の結果、シカ採食の有無に関わらず、施業を行わず倒木を残置した場合に最も地域自然林に近い種構成となり、次いで残渣列、最も自然林と異なる種構成は植栽列であった。これは植栽列では重機による攪乱で前生樹が破壊され、開放地化によって遷移初期植物や外来草本が増加する一方で、倒木残置の場合や残渣列では前生樹が残り、成長するためであると考えられる。ただし残渣列の倒木は未だ木本種の更新立地として機能しておらず、草本種が主であった。植物量は、施業よりもシカ採食圧によって大きく減少することが分かった。特に施業によって倒木が除去された場合、シカの侵入が容易になることで採食圧が高まり、植物量が減少すると考えられる。
以上より、風倒15年後の北方林において種構成は施業によって遷移初期植物が主体となり、植物量は主にシカ採食圧によって抑制されることが明らかとなった。