| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(口頭発表) E02-07  (Oral presentation)

東京都武蔵野市の管理された都市林における植物多様性評価
Evaluaion by plant diversity of the managed urban forest in Musashino City, Tokyo

*島田和則(森林総研多摩科学園)
*Kazunori SHIMADA(Tama For. Sci. Garden, FFPRI)

都市域においてわずかに残る森林(都市林)は、都市住民にとって日常的に接することできる身近な自然として大変重要なものであり、適切な保全が望まれる。しかし都市林は、孤立・小面積化した林分が多いこと、かつて里山林として利用されていた林分の放置による質的変化など、保全の観点から様々な問題を抱えている。本研究は、このような都市林の適切な保全のあり方を検討するために、小面積の孤立林(樹林部分約0.7ha)である武蔵野市境山野緑地にて、ボランティア団体「武蔵野の森を育てる会」により行われている全域のフロラ調査及び樹林部分の方形区調査のデータを分析し、植物の多様性や生育環境区分からみた種構成について検討した。調査の結果、樹林部分全体では319種確認され、出現種の構成は外来種が37%を占めた。残りの63%を占める在来種の約1/3は森林生の植物であり、これらにとって森林植生の限られた都市域において貴重な生育環境であるといえる。とはいえ在来種の約2/3は非森林生の種であり、これらに依存した里山的な種構成であった。そのため保全の方向性は、放置して遷移の進行による自然林への移行を期待するよりは、適切な管理により里山的多様性を保全する方向が望ましいと考えられた。また外来種の割合が高いことは、周囲を市街地に囲まれ常時侵入しているためと考えられるが、これらの繁茂を防ぐための対応が重要である。ここでは継続的に下刈りや外来種駆除などの保全管理が行われている。都市林の多様性のポテンシャルは履歴と周辺状況及び管理形態に依存するが、本研究の対象地においては周囲に種の供給源があり、現状では適切な里山的管理によって良好な状態に保たれていると考えられた。


日本生態学会