| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
一般講演(口頭発表) E02-13 (Oral presentation)
生物量変動はその生物を取り巻く環境に大きく依存することが知られている。これまでの理論・実証研究は、生物量変動の状況依存性が分類階級によって異なることを示唆する。しかし、状況依存性の強さを定量的に評価することは困難であり、分類階級間の状況依存性の強さを定量的に比較した研究はほとんどない。この問題を克服するために我々は時系列予測を行ったときの予測力の違いに着目した。具体的には、生物量変動のルールが教師データ・テストデータ間で変化していると予測が悪くなると期待される。したがって、状況依存性の強さは教師データの時期間の予測力の違いを利用して評価することができる。本研究では、過去に物理環境の大きな変化を経験した琵琶湖における39年間の植物プランクトン(639種・216属・8綱)時系列データを利用して、状況依存性の強さを分類階級間で比較した。解析では、種・属・綱それぞれの分類階級について、異なる3期間(前期:1979–1991年・中期:1991-2003年・後期:2003-2015年)を用いて予測モデルを作成し、直近3年(2015-2018年)の生物量を予測し、予測力を評価した。解析の結果、状況依存性の強さは分類階級によって異なり、低次の分類階級で存在していた状況依存性が高次の分類階級では認められなかった。次に、高次の分類階級における状況依存性の消失が単に複数の種の生物量をまとめることにより生じる平均化効果か検討するため、ランダムに種を寄せ集めた群集を作成し、上記と同じ解析を繰り返した。その結果、グループに含まれる種数が多くなるほど状況依存性が低下する傾向が認められた。しかし、綱とランダム群集では状況依存性が有意に異なり、綱でまとめることには平均化以上の効果があることが示唆された。状況依存性に分類階級間の違いが存在することから、生態系の管理や予測を行う場合、予測モデルを作成する際には予測対象の分類階級を考慮する必要があることが示唆される。