| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(口頭発表) F01-08  (Oral presentation)

エコラベル付き農産品に対する消費者選好とその空間的分布
The diversity of consumer's preference on eco-labeled product and its spatial distribution

*京井尋佑(京都大学大学院), 藤野正也(富士山科学研究所), 栗山浩一(京都大学大学院)
*Shinsuke KYOI(Kyoto Univ.), Masaya FUJINO(Mount Fuji Research Institure), Koichi KURIYAMA(Kyoto Univ.)

 エコラベルは環境保全型農業によって生産された農産物(環境保全型農産物)に付与され,消費者に対して農産物の情報を提供する.その結果,消費者は慣行農法によって生産されたものとの区別が可能となる.
 エコラベルに対する消費者選考についての研究は,これまで数多くおこなわれてきた.しかし,先行研究の多くは,一般消費者が有する多様な選考を十分に考慮できていない点や,特定のブランド米や特定の消費者グループのみを分析対象としている点で不十分である.そこで本研究では,消費者選考の多様性の存在を考慮し,一般消費者を対象に複数のエコラベル(有機JAS,特別栽培米),生産者情報(実践宣言,名前,顔写真,メッセージ)に対する消費者選考を分析した.
 分析にあたり,本研究では関東と関西の一般消費者を対象にWebアンケート調査を実施した.調査においては,回答者の個人属性や環境意識を尋ね,米を題材とした選択型実験を実施した.
 分析により,まず,消費者選考は多様であり,消費者はその選考に応じて9クラスに分類された.また,消費者の米選択に対して,エコラベルや実践宣言は概ね一貫した影響を与えるが,その影響の大きさは異なる.さらに,エコラベルに対するWTPは生産者情報に対するWTPよりも大きかった.
 また,一般消費者が有するWTPの空間的分布についても明らかとなった.特に,三次メッシュレベルで,エコラベルに対して相対的に高いWTPを有する消費者が集中する地域と,相対的に低いWTPを有する消費者が集中する地域が示された.
 本研究の結果より,実践宣言の有効活用による環境保全型農産物需要の拡大や環境保全型農業の普及の可能性が示唆された.そのため,現行の認証制度に加え,実践宣言の認証制度化や特定の消費者をターゲットとするマーケティング活動が求められる.


日本生態学会