| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(口頭発表) F02-07  (Oral presentation)

絶滅危惧種スイシャホシクサの生育環境
Conservational study for the threatened plant species Eriocaulon truncatum Buch.-Ham. ex Mart. in Iriomote Island

*高岸慧(東京農業大学), 宮本太(東京農業大学), 内貴章世(琉球大学)
*Kei TAKAGISHI(Tokyo Univ. Agriculture), Futoshi MIYAMOTO(Tokyo Univ. Agriculture), Akiyo NAIKI(Univ. Ryukyus)

ホシクサ科ホシクサ属スイシャホシクサは、東南アジアの熱帯域に分布し、タイでは一年生草本であることが報告されている。国内では、沖縄本島、西表島のみに生育し、本種は環境省により絶滅危惧ⅠA類に指定されている。国内における本種の生育は、水稲が行われている湿地環境のみである。しかし、これらの環境は水稲からサトウキビへの作付け作物の転換による環境改変、水稲作付け期の除草剤の散布、さらに農業従事者の高齢化による耕作放棄による植生遷移の進行などにより、生育地の消失または減少している。沖縄本島における生育地のひとつも耕作放棄により消失している。今後、生育地の保全を進めるには、本種の生態的特性などの情報が必要である。本研究では、沖縄県西表島においてスイシャホシクサの生育環境特性を明らかにすることを目的とした。
 本種のシュートは年間を通じて観察できた。2月に前年からの開花シュート脇から新たなシュートを観察した。その後、これらのシュートは花序を発達させ6月から1月まで開花を観察した。これらのことから、本種は多回繁殖型多年生草本であることが明らかになった。本種の生育は26 %以上の土壌含水率を維持した水田脇に発達した緩傾斜地および棚田の法面で観察された。これらの生育地の土壌含水率は、湧水により年間を通じて維持されていた。本種の生育が観察された緩傾斜地における植生動態は、斜面下部からイボクサ群落、スイシャホシクサ群落、カッコウアザミ群落の3群落に区分された。これらの群落の土壌含水率は群落間で有意な差異が認められた。群落内の光環境は、イボクサ群落とスイシャホシクサ群落の2群落間で有意な差異が認められた。
 これらのことから本種は微地形によって創出される水分環境と競合種との光競合の影響を強く受けていることが明らかになった。本種の保全には単一的な環境ではなく、緩傾斜による水分環境のゆらぎと光環境の維持が重要である。


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