| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
一般講演(口頭発表) G01-04 (Oral presentation)
種子散布は、霊長類の森林生態系における重要な役割のひとつとして注目されている。果実食者による種子散布後、その後の行方を調べた調査は数少ない。ニホンザルの糞に集まる二次散布者としてセンチコガネ類(丸橋, 2000; Enari, et al., 2001)が報告されている。屋久島ではシカによるサル糞食が見られる(揚妻 & 揚妻-柳原,2006: Nishikawa & Mochida, 2010)。げっ歯類やヤクジカ等の動物による糞中種子食の頻度や時間帯を調べるために、カメラトラップ調査を行った。2015年10~12月に屋久島西部地域でサル糞を採集し、サル糞内の長径3mm以上の種子を除去後、着色した種子を各糞100個ずつ埋め込んだ(以下、調整糞と呼ぶ)。サル糞から噛み砕かれずに出た種子から長径3mm以上の植物種を4種(カラスザンショウ、ハゼノキ、モッコク、シラタマカズラ)選び、それらの果実から種子を摘出、果肉・果皮を除去した種子を用いた。森林内に各植物種につき実験区を5つ設置し、各実験区に1) シカ避けカゴを被せた調整糞、2) 小動物避けカゴを被せた調整糞、3) 糞虫避けカゴを被せた調整糞、4) 着色種子、5) 無着色種子、6) カゴなしの調整糞を置き、実験区のある地表面に向けてカメラトラップを設置し、訪問動物を撮影した。設置から3日後(実験区A)、1週間後 (実験区B)、1ヶ月後(実験区C)に残存種子数を確認した。実験区Cにカメラトラップを設置した。ヤクジカのサル糞食は設置から24時間以内に実験区の90%以上で確認された。サル糞に混ぜなかった種子の半数以上は、1ヶ月後、実験区内で再発見された。このことから、この地域ではサル糞がシカを誘引することで、シカによるサル糞内種子被食率が増加すると推測された。また、げっ歯類等の他の動物の訪問・行動についても報告する。