| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
一般講演(口頭発表) G02-02 (Oral presentation)
立山連峰内にみられる弥陀ヶ原火山は,その東部に位置する立山地獄谷において,水蒸気爆発によって形成された多数の爆裂火口を有し,噴気活動が活発である。2011年3月に発生した東日本大震災の後,同年秋には一次的に地震が増加し,翌年には一部の噴気孔において温度の上昇と噴気の拡大・活性化が確認された(気象庁,2013)。それ以降,噴気ガスに晒させる高山帯において,ハイマツ等の衰退や枯死が観察されるようになった。本火山の噴気ガスは,H2OやCO2の他,H2S,SO2,HCl等の有毒成分を含んでおり(Seki et al., 2019),植生衰退のさらなる進行が懸念される。調査対象地域は,国立公園内にあり,自然環境の管理や利用者の安全対策を講じる上でも噴気ガスと植生衰退域の空間的な広がりを把握することが重要となる。本研究は,小型航空無人機(UAV,DJI社製Phantom 4 Pro)を用い,春季の積雪面に見られる着色から噴気ガスの空間分布を予測し,植生衰退との関係を明らかにする目的で実施した。噴気孔から東側に位置する植生域,最大距離約1kmの範囲を調査対象とした。DJI社製ドローンを用いて取得した積雪期の画像について,オルソモザイク画像を作成した後,RGB画像からLab画像に変換し,火山性ガス由来と考えられる硫黄粒子濃度と高い相関が認められた(b-a)値(Sazawa et al., 2019)にバンド演算処理を行い地図化した。その結果,噴気ガスは噴気孔からの距離に依存するものの,広い範囲に拡散していることが示唆された。高山植生の衰退は,噴気孔に近い特定(西南及び南西向き)の斜面で顕著であったが,噴気孔から遠く離れた場所でも検出された。最後に,積雪深,噴気孔からの距離,斜面方位等の土地的要因を説明変数とし,植生衰退の空間変異について考察を行った。