| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(口頭発表) G02-04  (Oral presentation)

植生データベースを活用した全国スケールでのスギ・ヒノキ植林の下層植生類型化
Nationwide vegetation typology of Japanese cedar and cypress plantations using a vegetation database

*阿部聖哉(電力中央研究所)
*Seiya ABE(CRIEPI)

環境アセスメントでは、重要な種や生態系の注目種などの生息・生育環境を評価する際に、植生などに基づく環境類型区分が重要な情報となる。自然林や二次林では、ヤブツバキクラスの自然植生・代償植生、ブナクラスの自然植生・代償植生など、気候や植生帯を反映した分類が類型区分の基礎となる。一方、国土の約2割、人工林の約7割を占めるスギ・ヒノキ植林は、低地から山地まで植生帯をまたいで広く分布しているにも関わらず、単一の植林地としての取り扱いがなされてきた。これまで、気候帯ごとに人工林の下層植生型が異なること(前田・宮川 1970)や、スギ・ヒノキ植林の下層植生が潜在自然植生に対応するものであること(下田・奥田 2001)が示されてきているが、全国スケールでの下層植生タイプの分布と関連する要因は明らかにされていない。
本研究では、第6-7回の自然環境保全基礎調査において現存植生図作成の際に全国から収集されたスギ・ヒノキ植林の747地点の植生調査データを用いて、下層植生のマクロ分布パターンと関連する気候要因を抽出することを試みた。解析には、国土スケールでの大まかな種組成のパターンを解析するのに適したISOPAM法(Schmidtlein et al. 2010)を用いた。第2段階までの分類の結果、全国のスギ・ヒノキ林は主にヤブツバキクラスの種から構成されるイヌビワ型、イヌツゲ型、アオキ型と、主にブナクラスの種から構成されるジュウモンジシダ型、クリ型、ケヤキ型、オオバクロモジ型の7つの下層植生タイプに分類された。また、種組成の違いをもたらす主な気候要因は、暖かさの指数と降水量(年間、暖候期、寒候期)であることが示唆された。さらに、ヤブツバキクラスの種から構成されるタイプは3つとも85℃・月以上の地域に主に分布しているのに対し、ブナクラスの種から構成されるタイプでは85℃・月をまたがって分布するタイプがあり、特にジュウモンジシダ型が顕著であった。


日本生態学会