| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(口頭発表) G02-09  (Oral presentation)

格子確率モデルによる照葉樹林に隣接する管理放棄された二次林の遷移シミュレーション
Simulation of the transition of an abandoned secondary forest adjacent to a laurel forest by a lattice model

*中桐斉之, 長谷川加奈(兵庫県立大学)
*Nariyuki NAKAGIRI, Kana HASEGAWA(University of Hyogo)

里山近くの二次林はかって薪炭や木材、堆肥などの原料を得る場所として管理がされてきた。このような人間の管理によって、里山の多様な生物相の多様性は維持されてきたが、農業の機械化などにより役割を失い、現在では、二次林は、管理放棄されてきており問題となってきている。
二次林では出現種数の減少や種の欠落といった種構成の変化による林内の種多様性の低下や、外来種や園芸種のなどの侵入種の増加、散布力の強い鳥散布型の種の集中分布や増加などで、管理放棄された際に、偏向遷移が起こることが予測されている。この遷移の方向は、周辺の環境からの種の侵入により遷移が進むため、自然林が近くに存在するか否かなどの周辺の景観の違いによって、異なると考えられているが、その詳細については未だ明らかになっていない。
そこで本研究では,二次元格子を用いて照葉樹林に隣接する管理放棄された二次林において間伐の必要性と効果的な間伐方法について解析するためモデルを構築し、その遷移を計算機シミュレーションにより解析することとした。
具体的には、400×400の二次元格子空間に樹木を配置し、樹種ごとに増殖率と枯死率と種子散布距離を設定し、それぞれの樹木が増殖・成長・枯死の各プロセスを繰り返すとした。また、これに加え、管理方法として、群状間伐1種と列状間伐4種の計5種の間伐方法をモデルに組み込み、それぞれについて比較実験した。シミュレーションの結果、現在より30年以降において偏向遷移が起こることが分かった。また、偏向遷移を防ぐために、伐木列と残存木列の幅を変化させることで、有効な間伐方法を解析した。その結果、群状間伐の有効性や、列状間伐における伐木列と残存木の幅によって遷移の傾向が変わることが分かった。


日本生態学会