| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(口頭発表) G02-10  (Oral presentation)

富士山青木ヶ原針葉樹林のギャップ更新様式
Gap regeneration of a coniferous forest on Aokigahara lava flow, Mt. Fuji

*山村靖夫(茨城大学), 森脇美貴(茨城大学), 中野隆志(富士山科学研究所), 安田泰輔(富士山科学研究所)
*Yasuo YAMAMURA(Ibaraki Univ.), Miki MORIWAKI(Ibaraki Univ.), Takashi NAKANO(Mount Fuji Res. Inst.), Taisuke YASUDA(Mount Fuji Res. Inst.)

青木ヶ原針葉樹林は富士山北西麓(標高900〜1300 m)の約1150年前に噴出した溶岩流上に成立したヒノキとツガが優占する常緑針葉樹林であり、土地的極相の森林群集とされ、ギャップ更新によって維持されていると推定されている。本研究は、林分構造とギャップ更新様式の特徴、および、それらと標高との関係を明らかにすることを目的として、①林冠の構成樹種とギャップの広域的な被度調査、②標高の異なる多地点における閉鎖林分と林冠ギャップ含む林分の毎木調査を行った。被度調査には接線法を用いた。ギャップの調査では大多数を占める小面積のギャップを対象とした。ギャップ形成時期とギャップ修復を担う個体の齢は年輪データから推定した。
林冠を構成するヒノキとツガそれぞれの被度と標高の間には有意な相関が認められ、高標高ではヒノキが優占し、低標高ではツガが優占する。ミズナラなどの広葉樹の被度は低標高でより高かった。高標高域(1100-1300 m)のギャップには、ヒノキの前生個体(ギャップ形成前に定着した個体)が多く出現し、ヒノキの胸高断面積合計(BA)はツガや広葉樹に比べて非常に大きく、ギャップ形成後の時間とともに増加した。ギャップ下の稚樹密度はヒノキが最も高く、ツガや広葉樹では非常に低かった。一方、低標高域(900-1100 m)では、ヒノキ、ツガ、広葉樹がそれぞれギャップ修復に関わっており、ギャップ形成後の広葉樹のBAと相対優占度の増加が著しく、ツガは減少する傾向を示した。この間に幹密度が増加する傾向を示したのはヒノキだけであった。以上より、高標高域では、ギャップ更新によってヒノキ林が維持され、動的平衡に近い状態であり、下部域ではギャップ修復にはヒノキ、ツガ、広葉樹の3者が関わるが、ツガの優占は次第に低下しヒノキの優占が高まると考えられた。


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