| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(口頭発表) I01-06  (Oral presentation)

八重山諸島におけるコガタハナサキガエルの胃内容分析
Stomach contents analysis of Odorrana utsunomiyaorum in Yaeyama Islands

*戸金大(慶應・自然科学研究セ), 秋田耕佑(大阪市環境科学研究セ), 阿南一穂(相模原市役所), 福山欣司(慶應・生物学教室)
*Dai TOGANE(RECNS, Keio Univ.), Kohsuke AKITA(Osaka City RCES), Kazuho ANAN(Sagamihara City), Kinji FUKUYAMA(Dep.of Biology, Keio Univ.)

コガタハナサキガエルOdorrana utsunomiyaorumは、沖縄県八重山諸島の石垣島および西表島に分布する日本固有種で、山地を流れる河川の渓流域に生息する。本研究では生態的特性の1つである食性の解明を目的に、本種の胃内容物を分析した。
2019年7月および10月に石垣島と西表島の河川を踏査し、捕獲した個体を0.1%MS222水溶液で麻酔後、強制嘔吐法により胃内容物を摘出した。80%エタノールで固定した後に、胃内容物に含まれる生物種を顕微鏡下で原則目レベルまで同定した。
のべ18個体を捕獲し、そのうち16個体から胃内容物を確認した。捕獲個体の頭胴長(36.4-58.0mm)には個体群間による差異は認められなかった。摘出した胃内容物を分類したところ、有機物(動物、植物)と無機物(石や砂)が検出された。混飲されたと考えられる植物と無機物を除き、被食動物の種数と個体数を解析した結果、4綱10目51個体が確認された。分類群別では昆虫綱が最も多く、被食動物全体の約82%を占めた。特にゴキブリ目(25.5%)の個体数割合が高く、バッタ目(19.6%)、コウチュウ目(17.7%)がそれに続いた。今回確認された被食動物の中で、樹上を主な生息環境として利用する動物は少数であった。また、成虫が飛翔能力を有する分類群においても、チョウ目は幼虫、ハチ目はすべてがアリ科の働きアリであり、飛翔能力の無い個体のみが認められた。石垣島と西表島の個体群では、低頻度(N=1)で出現した動物がそれぞれ認められたが、どちらの個体群からも高頻度に出現する動物は共通していた。これらのことから、コガタハナサキガエルは地表性の動物を主要な餌資源として利用していることが示唆された。


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