| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
一般講演(口頭発表) I01-14 (Oral presentation)
島嶼において、イエネコ(Felis silvestris catus)による希少在来種への影響は深刻である。効果的な管理や住民との合意形成を図るためには、個体群レベルで野ネコの分布要因を理解する必要がある。研究対象地である徳之島は生物多様性の保全上重要性が非常に高い地域であるが、野ネコによる希少在来種への捕食事例が多数報告されている。
本研究では、野ネコの個体群ソースを明らかにすることを目的に3つのことに取り組んだ。⑴自動撮影カメラを用いて、森林景観とそれ以外の人為景観で野ネコの生息状況を比較した。⑵捕獲データを用いて、人為景観における野ネコ捕獲数と土地利用(居住地・農地・緑地・畜舎)から野ネコの分布要因を探索した。⑶個体群ソースである可能性が高いと予想される畜舎でヒアリング調査を実施し、どの程度野ネコへ餌付けが行われているのかを調べた。
調査期間におけるカメラあたりの野ネコの平均識別個体数は森林景観で0.23匹、人為景観で2.27匹であり、人為景観が野ネコの主な生息地となっていることが示唆された。野ネコ捕獲効率(CPUE)をもとに、人為景観における密度に影響する要因を解析したころ、畜舎の密度が高いほど野ネコ密度は高く、市街地よりも緑地が多い環境で密度が高い傾向が見られた。ヒアリング調査から、畜舎の45%で野ネコへの餌やりが行われていることがわかった。これらの結果から、畜舎で行われる餌付けが野ネコの増加を促進し、島全体の野ネコ個体群のボトムアップに貢献していることが示唆された。徳之島における希少在来種の減少を食い止めるためには、畜舎での野ネコへの餌付けを止めることが重要である。この合意形成には、野ネコがもたらす生態リスクの更なる検証と啓蒙が必要である。