| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(口頭発表) I02-03  (Oral presentation)

陸上の日射環境の指標となる波長 【B】
Indicative wavelengths for terrestrial radiation environment 【B】

*久米篤(九州大学), 秋津朋子(筑波大学), 奈佐原顕郎(筑波大学)
*Atsushi KUME(Kyushu Univ), Tomoko AKITSU(Univ. of Tsukuba), Kenlo N NASAHARA(Univ. of Tsukuba)

陸上生物の光応答には、太陽からの日射スペクトルが大きな影響を与えていることが予想されるが、実際の日射スペクトルの性質についてはほとんど検討されてこなかった。しかし、直達日射スペクトルが植物のクロロフィル選択に大きな影響を与えている可能性が示されたように、散乱日射と直達日射では日射スペクトルやそのエネルギー強度に大きな違いがある。この違いは、日向と日陰、あるいは南斜面と北斜面の放射スペクトルの違いの原因となる。一方、完全曇天時には直達日射成分はほぼ0になるため、方向性のない散乱日射が卓越し、放射環境は均一化される。このような違いは、光受容体や光合成色素の吸収スペクトルと相互作用することによって、生物に光情報として検知される。陸上植物の光受容体としては、フィトクロムやフォトトロピン、クリプトクロムなどがあり、クロロフィルや他の色素も光検知色素として利用できる可能性がある。そこで、野外の放射環境を評価するために、直達・散乱日射スペクトルの実測データを元に、植物の光受容体が日射スペクトルから利用可能な情報を検証した。その結果、晴天日の直達・散乱放射の分離は、入射スペクトルに偏りを引き起こし、様々な環境情報をもたらしている一方で、完全曇天時には、これらの情報はほぼ消失(白色化)していた。しかし、680nm/ 720nm, 550nm/ 470nmの組み合わせは、入射日射量と関連する情報が安定して得られる波長であった。


日本生態学会