| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(口頭発表) I02-06  (Oral presentation)

低木と高茎草本のアロメトリーと地上部形態の類似性と相違性:タラノキ属での比較 【B】
Similarities and differences of allometry and above-ground architecture between shrub and tall herb of Aralia (Araliaceae) 【B】

*清野達之(筑波大学・生命環境)
*Tatsuyuki SEINO(University of Tsukuba)

ウコギ科タラノキ属のタラノキ(低木)とウド(高茎草本)の地上部形態とアロメトリーの比較を行ない,同属内の低木と高茎草本の形態と同化物配分の相似点と相違点の調査を行なった.両種とも分枝をせず,外見的にはよく似た「形」はしている.これらの成長解析の比較から,草本と樹木の違いを機能面から解析することを試みた.調査は,筑波大学八ヶ岳演習林の全天地に自生しているタラノキとウドを対象とした.両種から同じ地上高17 -258 cm の範囲にある16個体を選び,地上部高,地上部高の1割直径,crown areaを測定し,外部形態を測定した.その後に地上部の刈取りを行ない,茎,葉部,葉部の支持器官に細分し,乾重量を測定した.外部形態と器官毎のアロメトリーを両種間で比較した.
その結果,タラノキ(木本)はウド(草本)と比較して,地上高に対しての直径が大きく,crown areaが広く,葉部とその支持器官へ多くの同化産物を配分していた.茎部の密度はタラノキの方がウドよりも高く,タラノキは木化した茎を持つため,より安定した物理的強度をもって,地上高の増加に応じてcrown areaの拡張を可能にしていた.そのため,同じ地上高の範囲であっても,ウドは物理的な限界近くまでの地上部高であったが,タラノキは木部をもつことで安定した葉群を維持できる相違点があった.しかし一方で,ウドはタラノキと同じような地上高を有することができた.ウドの地上部は成長期間ごとに更新する.そのため低い茎密度ではあるが,ある程度の茎直径を確保することで,茎への同化産物の配分に大きく依存しないデザインをしていることがわかった.そのため,両種は物理的な安定性と同化産物の積み重ねをどうするか,という機能面の違いで,木本と草本の特徴をそれぞれ反映していると結論した.


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