| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(口頭発表) I02-11  (Oral presentation)

榛名山の里山地域に自生する数種の在来植物種の種子発芽特性と光・気温への生長反応
Seed germination and growth responses of seedlings to  light and temperature conditions of plant species in SATOYAMA region on Mt. Haruna.

*管雪, 石川真一(群馬大学)
*Xue GUAN, Shin-Ichi ISHIKAWA(Gunma Univ)

群馬県立榛名公園は、湿性草原である沼ノ原で多くの絶滅危惧種を含む43科154種5変種の維管束植物の生育が確認されている(群馬県2003)ホットスポットである。ここに自生する代表的な絶滅危惧種キキョウ、オミナエシについて発芽実験(10/6℃〜30/15℃)・栽培実験(10/6℃〜30/15℃、相対光量子密度3%〜100%)を行い、発芽特性、生長特性の解明を行った。キキョウ、オミナエシは25/13℃区〜30/15℃区で最終発芽率よび相対生長速度が最も高くなったことから、本質的な高山植物ではない可能性がある。実際、この2種は「秋の七草」であり、かつては人里近くに自生していた植物である。
 キキョウ、オミナエシが群馬県内において、現在の生育地よりも標高の低い場所に分布を拡大できない理由は、発芽実験の結果から、冬季が短いと冷湿処理がかからず発芽しにくくなること、および栽培実験の結果から、良好な生長には9%以上の光環境が必須なため、他の植物との競合により被圧されると生長が阻害されるためと考えられる。以上の結果から、キキョウ、オミナエシが群馬県内で現在の生育地よりも標高の低い場所に分布を拡大することは、生態学的には非常に難しく、樹木の伐採や定期的な草刈りによる自生地の里山的保全や地球温暖化の防止など、人為的な保全対策が不可欠と考えられる。
 実際、沼ノ原は、戦前および戦後は畑や牧草用草原として利用されてきた。その後次第に利用されなくなり、ミズナラなどの樹木が生長して点在し、ビッチュウミヤコザサが大繁茂し優占している部分が拡大している。当地は観光用に時折下草刈りが行われており、これが原因で多数の植物が生育していると考えられる。


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