| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(口頭発表) I02-14  (Oral presentation)

「ユキツバキ とヤブツバキの交雑履歴がどのように花形質多型に影響を及ぼすのか」
"How does the natural hybridization between Camellia rusticana and Camellia japonica affect their flower morphologies"

*蓑和冴文(新潟大学)
*Saya MINOWA(Niigata Univ.)

日本にはヤブツバキとユキツバキの2種のツバキ節が自生しており、この2種の分布境界ではユキバタツバキという多様な花形質の個体が多く生育する。それらは地元の保全の対象になっており、成立由来を知ることが期待されているが、形質多型がどのような歴史的背景により成立したのかは明らかになっていない。このため本研究では、ユキバタツバキの花形質に交雑履歴がどのように影響しているのかを目的とした。花形態の分析には、ユキバタツバキの分布地といわれる岐阜県郡上市大和町大間見と滋賀県長浜市山門水源、ユキツバキ型形質だが交雑履歴のある滋賀県長浜市余呉町椿坂、新潟県佐渡市国見山の計4地点で採取したサンプルを用いた。ユキツバキおよびヤブツバキの花形質は三浦ら未発表データを用いた。核EST-SSR10座及び葉緑体SSR8座を用いて遺伝子型を決定した。得られたデータは、核はStructure2.3.4、葉緑体はBAPS6.0を用いて遺伝的構造解析を行った。その結果、核の遺伝的構造については、ユキバタツバキはヤブツバキ由来、ユキツバキ型交雑帯はヤブツバキとユキツバキ由来だった。核は鳥による花粉媒介により、頻繁に遺伝子流動が起こっているためと予測された。葉緑体の遺伝的構造は、ユキバタツバキはヤブツバキ由来、ユキツバキ型交雑帯はユキツバキ由来だった。げっ歯類による限られた種子散布のため、分布変遷の種特性が表れやすく、これらの遺伝的構造はそれぞれの母集団の種を示していると考えられた。また同時に遺伝解析した台湾のヤブツバキと中国のCamellia chekiangoleosaと比較すると、ヤブツバキは台湾のヤブツバキと同じ遺伝的構造であったが、ユキツバキはC. chekiangoleosaと同じクラスターに分けられた。このことからユキツバキはヤブツバキから種分化したのではなく、大陸から別々に移入したと考えられた。


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