| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
一般講演(口頭発表) L01-02 (Oral presentation)
道路は様々な生育地を連結し、車両や人の移動に伴う植物の拡散に重要な役割を担っている。しかし、路傍に吹き溜まった土壌は薄く、乾燥などの物理的ストレスが強いため、定着できる種は限られる。本研究では、代表的な人為的撹乱地である農耕地と路傍の植物種組成を比較し、各生育地の優占種を明らかにするとともに、これらの播種実験を通して、各生育地で適応的な形質について考察した。
滋賀県の農耕地と路傍各25地点において2018年の春と秋に植生調査を行い、指標種分析により各生育地の優占種を抽出した。また、各調査地点から採取した土壌のpH、土性、可給態窒素、水分含量を測定した。農耕地と路傍の植生は大きく異なり、農耕地では春は冬生一年草、秋は夏生一年草が優占し、路傍は春秋ともに冬生一年草が優占し、農耕地に比べると生育種数が少なかった。農耕地土壌は粘土質で酸性、路傍の土壌は砂質でアルカリ性を示した。
2019年春に各生育地に優占する冬生一年草(各6種)の種子を採集し、農耕地と路傍それぞれのpHと土性を模した試験地に相互に播種し、各種の出芽、死亡、開花個体数を1週間ごとに測定した。農耕地種は播種後すぐに出芽し速やかに開花に至る種が半数を占めた。これらの出芽期は夏にあたり、乾きやすい路傍条件下では高い死亡率を示したため、種子休眠の浅い種は路傍では定着しにくいと考えられる。路傍種は気温が低下する秋に出芽する種が多く、全種において農耕地条件よりも路傍条件における出芽率が高かかった。水分保持力の高い農耕地条件で出芽率が低下した理由として、路傍種の種子は湿度の高い条件に長期間さらされると死亡する可能性が考えられた。種子の保存条件と死亡率の関係については今後検討する予定である。