| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
一般講演(口頭発表) L01-05 (Oral presentation)
1gの土には数十億個、数千種以上の原核生物が存在していると言われる。これらの生物は、遺伝子の水平伝播や代謝物の相互依存など、マクロ生物とは異なる様々な方法で相互に作用し合っている。微生物の間の相互作用は、およそ20年前までは数種の微生物を混合培養することで研究されていた。しかし、このようなアプローチに頼っていては、複雑な微生物生態系を、全ての種・相互作用について俯瞰した視点で理解することは難しい。
近年の塩基配列解析技術の発達などにより、細菌群集において群集の網羅的な菌叢組成データを比較的容易に得られるようになってきた。本研究では菌叢組成データに対して非線形時系列解析の手法を適用することで、細菌属間で働く相互作用を検出することを試みた。
土壌から採取した微生物集団を、土壌抽出液を主成分とする液体培地で振とう培養した。培養液から定時的にサンプルを採取し、16S rRNA遺伝子アンプリコンシーケンスと定量PCRを用いることで、200属程度の細菌の疑似個体数変動データを得た。この多属時系列データは、非線形動態理論に基づく因果推論手法であるConvergent Cross Mapping(CCM)法を用いて解析した。CCM法は非線形な動態を示す時系列データに適用可能であり、複雑な微生物叢の解析に適している。また、真の因果関係を疑似相関から区別することを可能にするという望ましい特徴を有している。CCMにより時系列データから3000程度の属間相互作用が推定された。これを利用して、属をノード、相互作用をエッジとした有向相互作用ネットワークを作成し、その構造の特徴づけを試みた。