| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
一般講演(口頭発表) L01-06 (Oral presentation)
Neotyphodium属菌類はイネ科植物に内生しているエンドファイトであり、感染した植物は耐病性などに優れると報告されている。また、エンドファイトは落葉分解に関わることが実証されている一方で、葉の加齢によるNeotyphodium属菌類の定着頻度の変動や他のリグニン分解菌との菌種間相互作用は明らかになっていない。本研究では、アオカモジグサの葉の加齢によるNeotyphodium属菌類の定着頻度の変化を明らかにするために、老衰段階の異なる葉からエンドファイトを分離し、それぞれにおける分離頻度を評価した。また、Neotyphodium属菌類と他のエンドファイトやリグニン分解菌との菌種間相互作用を評価するために、対峙培養試験を行った。
アオカモジグサの採取は2019年6月から7月にかけて同志社大学京田辺キャンパス周辺で行い、老衰段階が異なる葉鞘片からエンドファイトの分離を行った。また、対峙培養試験は2年前アオカモジグサから分離されたNeotyphodium属菌株と供試菌として本研究により高頻度で分離された2種とリグニン分解菌を対峙させることで行った。
計225菌株が分離され、形態観察とDNAバーコーディングにより26の分類群を同定した。分離されたNeotyphodium属菌類は1菌株のみとなった。本研究で対象にしたアオカモジグサでは、Neotyphodium属菌類感染による利益よりもコストが上回っていると考えられ、両者の関係は寄生的である可能性が示唆された。対峙培養試験では、供試菌のコロニーがNeotyphodium属菌類コロニー内へ侵入する置き換わりを示し、さらに、対峙区でのNeotyphodium属菌類コロニー直径が対照区より有意に小さくなった。これらより、Neotyphodium属菌類が他のエンドファイトに対してどのように振る舞うかは菌類の種や宿主植物によって異なり、宿主植物の死後、他の菌類よりも先に落葉に定着してもより分解能力が高く資源獲得力も高い菌類に淘汰されることが示唆された。