| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
一般講演(口頭発表) L02-08 (Oral presentation)
生物の形づくりを担う発生プログラムは、ゲノムに書かれた遺伝的要因だけでなく、温度変化、酸素濃度、乾燥、重力などの外的要因によっても変化する可塑性を示す。四肢動物の行動パターンや生息域の多様化に直結する手足の形態パターンの変化は、顕密な遺伝的制御を受けて生じるが、その一方で、ゲノム配列とは関係のない外的要因によっても手足の形態は大きく変化することがわかっている。たとえば、同腹仔であっても、胎児や新生児の段階で、手足を動かす頻度(=力学的ストレスのレベル)が低い個体は、手足の長さが極端に短くなることが知られており、低温環境下におかれた新生児でも見られる現象である。また、指の間の細胞を発生途中に死滅させて、指を分離させる「指間細胞死」は、そのレベルを変化させることで、ウマの足の指を減らし、アヒルの足には水かきをもたらし、コウモリには翼を与えることになった四肢形態の多様化の立役者であるが、この「指間細胞死」がおこるためには、環境中の酸素が重要であることが明らかとなった。本発表では、四肢を題材に、そのパターンを可塑的に変化させうる外的要因についての概説、及び、関連する我々の研究成果について報告する。