| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(口頭発表) L02-15  (Oral presentation)

空港生態学の提案:ハラヒシバッタの斑紋多型
Airport ecology: rapid evolution of pygmy grasshopper color polymorphism in the predator-free habitat

*林亮太(日本工営(株)), 鶴井香織(琉球大学)
*Ryota HAYASHI(Nippon Koei Co.,Ltd.), Kaori TSURUI-SATO(Univ. Ryukyus)

空港では、鳥類がエンジンなどにぶつかって飛行機が故障するバードストライクが大きな問題となっている。故障部位の修理にかかる直接的な費用だけでなく、バードストライクによるスケジュールの乱れなども含めると多額の損害が生じる。そのため、空港では鳥を追い払うために空砲や光線など様々な試みがなされている。広い草地を持つ空港には昆虫やクモなど様々な生物が生息しているが、それらの生物にとって空港は周囲に比べて捕食圧の低下した環境であるということができる。このような環境下では対捕食者戦略の一つである隠蔽擬態のメリットが消失すると考えられる。直接観察可能なタイムスケールで進行する生物の進化現象は、選択圧の強い環境下において様々な生物で報告されてきた。特に、人間活動による環境の変化がもたらす生物の進化は、シャクガの工業暗化を代表として数多く知られている。空港に生息する昆虫やクモ類などの生物はいずれも鳥類による捕食圧の低下という影響下にあり、体色や行動、群衆構造、食物網などさまざまな形質に影響していると考えられる。空港構内で生物を直に採集できるような許可を得ることは難しいが、空港周辺の草地などを対象とする「空港生態学」を進めることで、シャクガの工業暗化のような現在進行中の進化事例を他にも多く検出することが期待できる。本報告では、ハラヒシバッタの斑紋パターンを例に、空港でのバードストライク対策による捕食圧の低下がもたらす斑紋多型の頻度への影響を紹介する。


日本生態学会