| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-PA-002  (Poster presentation)

種内の量的変異は個体群の生産性を向上させるか 【B】
Does intraspecific quantitative variation improve population productivity? 【B】

*上野尚久, 高橋佑磨(千葉大・院・理)
*Takahisa UENO, Yuma TAKAHASHI(Grad. Sci., Chiba Univ.)

生物はどのような種においても、種内あるいは集団内において、個体間で行動や形態に遺伝的な多様性(変異)が存在する。近年の研究により、このような種内多様性は、時空間的なニッチの分割を通じて、集団の生産性や安定性といった生態的過程に対して非相加的な影響を与える可能性が指摘されている(一般に、種内変異によってもたらされる非相加的な生態的効果を多様性効果と呼ぶ)。ただし、種内変異の多様性効果を調べた研究の多くは質的変異に着目したものであり、集団内でより広範に認められる量的変異や多形質の変異を統合した多元的な個体差がもつ生態的過程を明らかにした研究はない。そこで本研究では、野外のオオショウジョウバエ(Drosophila immigrans)集団内における複数の量的形質やそれらの形質の統合した多元的個体差の多様性効果を明らかにすることを目的として、以下の実験を行なった。まず、集団内の遺伝的な変異の程度を推測するために、本種の複数の雌成虫をもとに系統(単雌系統)を確立し、各系統について翅の形態や成虫の活動量とその日周リズム、幼虫の活動量や成長速度を測定した。また、これらの形質データをもとに、標準化した系統間の形質(機能的)距離を算出した。次に、ランダムに選んだ2つの系統を混合して、生産性や安定性の指標として卵から成虫まで飼育したときの幼虫の成長速度や生存率、成虫の雌雄別乾燥重量を測定した。これらの計測値についてそれぞれの系統を単独で飼育した場合のそれらと比較することで、組み合わせごとに多様性効果の強度や方向性を評価した。形質距離や多様性効果を算出するときの指標によってパターンが異なったが、形質距離と多様性効果の強度の間には正の相関が存在する傾向が認められた。これらの結果をもとに、種内の量的変異や個体差とその多様性効果の関係を考察する。


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