| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-PA-003 (Poster presentation)
ヒゲナガハシリグモは水辺や林に生息する徘徊性のクモであるが、国内での分布域が限られていることから、その生態はほとんど分かっていない。本研究では、高知県高知市朝倉地区を流れる水路に生息するヒゲナガハシリグモの個体群を対象に、足場が形成される時期や成体が出現する時期を特定するとともに、その生態に関して明らかにすることを目的とした。ヒゲナガハシリグモによる足場形成は6月中旬に起こり、その後、オスの成体が出現した。水路を植物が覆う植被率が高いほど足場が形成されやすく、ヒゲナガハシリグモの個体数は足場のない区画に比べて足場のある区画の方で多くなることが明らかになった。足場では獲物を待ち伏せする個体やメスに近づこうとするオス成体が観察された。成体の卵嚢から生まれた次世代の個体である出嚢幼体は7月末から出現し始めた。ヒゲナガハシリグモの幼体、成体および出嚢幼体と足場の出現の時期から、足場の出現初期は幼体が形成していること、調査地の個体群は年1化であることが示唆された。足場が形成されることによって、メスにとっては効率良く捕食行動を行なう場所が供給され、足場上の個体密度が高まることでオスとメスの遭遇確率が高くなり繁殖の機会が高まっている可能性がある。