| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-PA-005  (Poster presentation)

中国産ヤマカガシ類の頸腺毒の由来および頭部の形態変化に関する考察
A comparative study in the source of steroidal toxins and relative head dimensions among the species of Rhabdophis nuchalis group in China.

*福田将矢(京都大学), 井上貴斗(京都大学), Alan H SATVIZKY(Utah State Univ.), Yige PIAO(Chengdu Inst. Biol.), 城野哲平(琉球大学), Qin CHEN(Chengdu Inst. Biol.), 森直樹(京都大学), 森哲(京都大学)
*Masaya FUKUDA(Kyoto Univ.), Takato INOUE(Kyoto Univ.), Alan H SATVIZKY(Utah State Univ.), Yige PIAO(Chengdu Inst. Biol.), Teppei JONO(Ryukyu Univ.), Qin CHEN(Chengdu Inst. Biol.), Naoki MORI(Kyoto Univ.), Akira MORI(Kyoto Univ.)

中国に生息するヤマカガシ属の多くの種はヒキガエルを摂食し、頸腺という器官に餌由来の毒を溜め込む。また、分子系統的解析および食性情報に基づき、ヤマカガシ属の中で主食がカエルからミミズへと変遷したことが推察されている。さらに、このうち一部のミミズ食の種において、毒源として利用する餌がヒキガエルからマドボタルへと変遷したことが推測されている。一方、多くの専食性のヘビ類では、獲物の捕獲や摂食に適応した形態が進化していることが知られており、ミミズやマドボタルといった細長い体型の餌を捕食する種は、カエルやヒキガエルなど大きな餌を捕食する種よりも、細長い餌に特化した可動域の小さい顎を持つことが予測される。本研究ではこの仮説を検証するために、ミミズを主食とするヤマカガシ属2種の毒源に関する調査、および主食や毒源が異なるヤマカガシ属4種における食性に関わる頭部形態の比較を行った。ミミズ食2種の頸腺に含まれる毒成分の化学分析および嗜好性に関する行動実験を行った結果、イツウロコヤマカガシ (Rp) はマドボタル、ミゾクビヤマカガシ (Rn) はヒキガエルを毒源として捕食することが示唆された。次に、これら2種に加え、カエルを主食としヒキガエルを毒源とするヤマカガシ (Rt) およびアカクビヤマカガシ (Rs) の頭部形態について、顎の可動性に関連する3つの変数(頭頂、下顎、方形骨の長さ)を測定し、主成分分析により形態比較を行った。その結果、カエル食の2種はミミズ食の2種に比べ、3変数全てが有意に大きかった。またミミズ食の2種間では、マドボタルを毒源とするRpの方形骨の長さが有意に短かった。以上のことから、ヤマカガシ属において、カエルからミミズへの主食の変化に伴う頭サイズの縮小化、さらにミミズ食の中でヒキガエルからマドボタルへの毒源利用の変化に伴う顎の可動性の縮小化といった、頭部形態の進化が起こったことが推測された。


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