| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-PA-006  (Poster presentation)

メダカは空を飛べるのか?:水鳥による魚卵の受動分散
Can Medaka fly in the sky?: the passive dispersal of fish eggs by waterbirds

*八尾晃史(筑波大学生物学類), 徳永幸彦(筑波大学生命環境系), 益子美由希(国総研)
*Akifumi YAO(Biol. Sci., Univ. Tsukuba), Yukihiko TOQUENAGA(FLES, Univ. Tsukuba), Miyuki MASHIKO(NILIM)

 淡水域に生息する生物にとって、陸地は自力での分散を妨げる障壁となる。節足動物、外肛動物、軟体動物等の水生生物では、卵や生体が水鳥に付着することによって、この障壁を超えて受動分散することが知られている。一方で、水鳥による淡水魚の受動分散についての報告は、極端に高い乾燥耐性を持つ卵で乾季を過ごす卵生メダカの卵が、カモハクチョウというカモ科の水鳥によって分散する可能性を示した特殊な例にとどまっている。本研究では、卵が極端な乾燥耐性を持たない淡水魚でも水鳥によって受動分散する可能性があるのか検証するために、ミナミメダカOryzias latipesを用いて実験を行なった。一般に魚類の生体は空中で短時間のうちに死亡するため、受動分散は卵の状態で起こると予想した。
 ミナミメダカの産卵基質となる水草が水鳥によって受動分散するのか、野外実験で確認した。サギ類が飛来する茨城県つくば市内の水田脇に実験池を1 m間隔で2つ設置し、一方の池のみに人工水草を入れて、自動撮影カメラで撮影・観察した。その結果、人工水草が飛来したアオサギの趾に付着してもう一方の実験池まで運ばれた。このことは、水鳥によって水草が分散することを示しており、卵が水草に付着していれば同時に分散する可能性が示唆された。次に室内実験として、卵を空中で乾燥させて生存率を測定したところ、水草に付けた場合に、付けていない場合よりも長い時間生存した。また、卵を付けた水草にサギ類の平均的な飛行速度である時速40 kmの風を当てたところ、全体の10%の卵が100分間以上生存した。このことから、卵が一度に70 km以上分散する可能性が示唆された。
 以上より、卵が極端な乾燥耐性を持たない種であっても、広く水鳥によって受動分散する可能性がある。発表では、水鳥による受動分散がミナミメダカの個体群動態に与える影響についても議論する。


日本生態学会