| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-PA-018 (Poster presentation)
環境DNAを用いた生体調査は目視や捕獲による従来の調査方法に並ぶ、新たな調査方法として注目されている。生体を捕獲する必要がなく、水を汲むだけで検出できるため、生態系への負荷を激減して調査をすることができる。そのため、捕獲が困難、もしくは禁止されている絶滅危惧種や希少種の検出にも用いられている。近年飛躍的に発展した環境DNA分析だが、未解明な現象が多く残されている。例えば、環境中での環境DNAの状態や分解に作用する環境因子などは、ほとんど分かっていない。今後、環境DNAの分解や環境中での環境DNAの状態や挙動を明らかにすることで、環境DNA分析による生物量の定量を行う際に、分解されたDNAの量を考慮して評価できる可能性がある。そこで、本研究では海、ため池の環境水と滅菌水に細胞とDNA(Internal Positive Control;IPC)を加え、時間経過とともにそれぞれのDNAのコピー数がどのように減少していくかを観察した。結果として、ため池と海のサンプルでは、細胞とIPCの添加後からDNAコピー数は指数関数的に減少したが、精製水中ではどちらも減少しなかった。細胞とIPCのどちらもため池の方がコピー数の減少速度が速くなった。また、ため池と海水のどちらもIPCよりも細胞の方がコピー数の減少速度が速くなった。細胞由来のDNAの減衰においては、水域間での細胞内外での浸透圧差の違いが、ため池と海水での減衰速度の違いに影響していると考えられた。