| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-PA-020 (Poster presentation)
イソミミズ(Pontodrilus litoralis)は、砂浜海岸の潮間帯上部に生息する大型貧毛類である。砂浜海岸に漂着した海藻類の分解者、肉食性昆虫などの貴重な餌資源として、砂浜生態系に大きく貢献していると考えられるイソミミズであるが、本種に関する生態学的知見は大きく不足している。
発表者らは淡路島の砂浜海岸全域を網羅するイソミミズの分布調査を行い、いくつかの地点では採集した本種についてCOⅠ遺伝子領域の解析行った。その結果、イソミミズが遺伝的差異の大きい複数のクレードからなる複合種であるという既存の研究結果を補強し、これまで調査例の少ない環境での採集にも成功した。加えてイソミミズの出現数が同一調査地でも、季節や時間帯によって大きく変動していると思われることから、本種が何らかの環境要因により、砂浜海岸において水平・垂直移動を行う可能性について言及した。
一連の調査を踏まえ、発表者は予備的に香川県全域について分布調査を行い、安定的にイソミミズの生息が確認できた砂浜海岸を調査地として選定した。そこで、これからはイソミミズの砂浜海岸における垂直・水平分布やその移動様式を支配する物理化学要因を特定したい。本研究では、冠水と干出を繰り返す環境傾斜が激しい潮間帯において、分解者がどのような環境応答を行うのかについて明らかにすることが期待される。