| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-PA-028 (Poster presentation)
わが国では半自然草原の減少や変質に伴い,生物多様性の低下が問題となっている。しかしながら半自然草原におけるアリ類のファウナや群集単位での知見は殆ど無く,種特性もあまり知られていない。そこで本研究では,本州中部を代表する半自然草原である霧ヶ峰高原において,異なる立地環境におけるアリ類群集の構造を明らかにすることを目的とした。霧ヶ峰高原の主な植生環境について,また各地区内での植生の連続的な変化に応じたアリ類群集の構造を明らかにするために,計6地区(A~F)を選定した。そして,各地区において各プロット内の植生が異なるように8m×8mのプロットを連続して5個設置した。これら6調査地区30プロットにおいて,2019年7月から10月にかけ,アリ類を採集した。また,植生調査および相対光量子束密度,土壌条件の調査を実施した。解析は、アリ類のプロットごとの出現頻度を用いたTWINSPAN解析による調査地および種群の分類、DCA解析による各調査プロットのアリ類群集の序列化を行った。なお、本研究はJSPS科研費 JP19K06107の助成を受けたものである。
アリ類は4亜科13属27種が確認された。TWINSPAN解析では、草地環境の地区(AとE)、森林と草地環境の隣接地区(BとC,D)、低木を含む草地環境地区(F)の3グループに分類された。またDCA解析より、第2軸と高さ1mの相対光量子束密度の間で有意な正の相関があった。さらに出現種は森林性種や草地性種、地区Fにおいてのみ出現した種、共通種の4グループに分類された。地区Fの群集が特異である要因は、ここではカシワとハシバミが密生し,下層にはニッコウザサが優占し,群落高が2m以下と小規模な階層構造の草原であるためと考えられた。以上のことから、草原環境において低木の有無や優占種の違いがアリ類の群集組成や構造に大きな影響を与えていると考えられた。