| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-PA-031  (Poster presentation)

異なる植生条件下でのミヤマシジミに対する共生アリと寄生バエとの相互作用
Interactions among Lycaeides argyrognomon and mutualistic ants and parasitic flies under different vegetation conditions

*葉雁華, 出戸秀典, 宮下直(東京大学)
*Yenhua YEH, Hidenori DETO, Tadashi MIYASHITA(The University of Tokyo)

約75%のシジミチョウ科の幼虫は、アリとの共生関係があることが広く知られている。そして、人為景観に生息するシジミチョウは、人間によるかく乱を頻繁に受けている。共生関係が人為かく乱からどの影響を受けるかを知ることは、基礎的にも応用的にも重要である。
ミヤマシジミ(Lycaeides argyrognomon)は本州中部の河川沿いや農地の土手などに生息するが、環境の変化により全国的に個体群が激減しており、絶滅危惧IB類に指定されている。日本に生息するミヤマシジミの幼虫は単食性で、マメ科のコマツナギ(Indigofera pseudotinctoria)という植物しか食べない。また幼虫は何種類のアリとの共生関係がある。調査を行っている長野県飯島町は、年間3~4世代発生すると考えられている。この地域の個体群は主に農地の土手に生息するため、アリとミヤマシジミの幼虫の共生関係やミヤマシジミの個体数変化は農業の草刈りが影響していることが考えられる。
本研究では上記の背景を受け、ミヤマシジミを中心に、共生アリ、アリと共生関係にあるアブラムシ、寄生バエなどとの相互関係や、それらに対する草刈りの影響について調べた。2019年5月から10月まで、26か所の調査地(155つユニット)に三つの世代を調査し、まとめたデータはGLMMで解析した。その結果、以下のことが示された:
(1)コマツナギの被度が高いところに幼虫が多い。また、幼虫との共生関係が強い種のクロオオアリとクロヤマアリの個体数も、幼虫の個体数を影響する(一次項が正相関、二次項が負相関)。
(2)幼虫の体サイズが大きく、またアリ個体数が多いと、幼虫へのアリの随伴率は高かった。また、草刈りの処理からの影響もあり、草丈が高いと幼虫の個体数が多くなった。
(3)草丈が高い処理区では低い区より寄生率は高いことがわかった。


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