| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-PA-035 (Poster presentation)
島嶼環境は資源の制約が大きく、小さな島では食物資源をめぐる種間関係が強く働くと推測される。本研究では面積2.63㎢の小島でありながら比較的豊かな食肉目相をもつ宮城県牡鹿郡女川町に位置する出島において、タヌキ、テン、キツネ、イタチにおける夏季の食性比較から昆虫食における種間でのニッチ分割の評価を行った。
分析には2017年から2019年の7月から8月に採取したタヌキ61個、テン57個(昆虫の分析66個)、キツネ13個、イタチ21個の糞を用い、ポイント枠法による食性評価を行った。その結果、4種とも昆虫類の占有率が約60%から70%以上と高い値を占め、量的には昆虫に依存した食性を示した。このことから4種の基本的な夏季の食性は類似することが明らかとなった。さらに、糞中の昆虫残渣を可能な限り子細に同定した結果、4種に共通してコガネムシ科(特にカナブン類)が高頻度で出現した。しかしタヌキではオサムシ科やシデムシ科といった地表徘徊性甲虫が、一方テンではクワガタムシ科やコメツキムシ科といった樹液食の樹上性甲虫が他の種よりも比較的高頻度で出現した。このことからタヌキとテンは互いに異なる分類群を捕食しており、採食生態の違いによるニッチ分割が示唆された。一方キツネとイタチでは、タヌキとテンで認められた採食生態特有の分類群の捕食傾向は認められなかったが、サンプル数が少ないために十分な精度での評価は困難と考えられ、サンプル数を増やしての再検討が望まれる。