| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-PA-037 (Poster presentation)
群集動態の安定性を適切に評価できるようになることは、持続的な生態系の維持につながるため、重要な研究課題としてあげられる。また、微生物群集の安定性は、基礎的な生態学分野だけでなく、応用的な医学や農業、工業分野で重要となるため、特に注目されている。しかし、これまでの実証実験研究では、安定性指標は群集が安定状態にあることを前提してきたため、変動し続ける群集動態の評価には適切ではなかったと考えられる。
本研究は、土壌細菌群集と淡水池細菌群集を、それぞれ3種の液体培地に接種した。それら6つの処理区を8個ずつ用意することで、多様性の異なる48の細菌群集を構築した。そして、細菌群集の110日間の連続サンプリングを行い、得られた時系列データから、群集動態の安定性を局所的に評価し、多様性と安定性の関係について考察した。古典的な安定性指標である変動係数(variability)や抵抗性(resistance)などは、常に変動し続ける生物群集に当てはめるのは不適切と考えられる。そこで、Energy landscape analysis を用いて安定状態を推定し、各安定状態に落ちる確率を安定性指標として用いた。
長期の連続培養から、接種材料が異なっても群集は培地成分によって、群集組成を変えることが分かった。また、バイオインフォマティクス解析ソフトPICRUSt 2を用いて、遺伝子情報を割り当てることで、代謝経路の時間変動を推定したところ、代謝経路は培養期間内で大きく変動せずに、群集内で保存的であることが示唆された。また、種多様性が高いほど群集は不安定であることが示された。これは、種多様性が高い時、群集は複数の安定状態に落ちつくことができるためである。現在、このメカニズムの理解のために溶存態全窒素、全炭素を測定しており、その一部の結果も紹介する。