| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-PA-042  (Poster presentation)

石狩浜カシワ・ミズナラ林の分断化パッチにおける潜葉性昆虫の群集構造
Community structure of leaf-mining insects on fragmented patches of Quercus forest at Ishikari coast

*松浦輝(北大・環境), 松尾歩(東北大・農), 佐藤光彦(東北大・農), 陶山佳久(東北大・農), 内海俊介(北大・FSC)
*Akira MATUURA(Hokkaido Univ. EES), Ayumi MATUO(Tohoku Univ. Agri.), Mitsuhiko P SATO(Tohoku Univ. Agri.), Yoshihisa SUYAMA(Tohoku Univ. Agri.), Shunsuke UTSUMI(Hokkaido Univ. FSC)

 群集形成メカニズムを明らかにすることは生態学の中心課題の一つである。群集を形成する重要な要素として、決定論的過程としての生物間相互作用と確率論的過程としての移動分散に焦点を当てた研究が行われてきた。分断化が進行する景観では、パッチ間での生物の移動が制限される。さらに、その影響は栄養段階によっても異なる可能性がある。そのため、近接した各パッチにあっても、多様な相互作用網が形成され、異なる群集動態が生じている可能性がある。本研究は、分断化景観において、移動分散と生物間相互作用が群集動態に与える影響を明らかにすることを目標とした上で、まず被食―捕食相互作用の空間構造を解明することを目的とした。
 石狩浜海岸林は主としてカシワ・ミズナラからなる防風林であり、道路や河川、港で分断されている。本研究では、カシワ・ミズナラ上の潜葉性昆虫と寄生蜂からなる群集について、分断化された6サイトを選択し、2018、2019年の2年間にわたり潜葉性昆虫の属レベルでの群集構造を調べた。また、2018年の秋世代について、MIG-seqとCOIを用いた種同定と食物網の作成を行った。
 属レベルの群集構造解析では、夏世代・秋世代間で群集構造が異なること、群集構造に地理的距離が影響していないことが示された。この結果は2年間を通して一貫していた。また、カシワでは、石狩川を挟んで潜葉性昆虫の種構成が異なるが、群集の類似度は距離やパッチ連続性と関連していなかった。食物網の結果では、種数と相互作用の複雑さに直接の関連が見られなかったが、潜葉性昆虫の種組成と寄生蜂の種構成の間には弱い関連が見られた。種同定では、MIG-seqはリファレンス・サンプルがあれば高い同定能力を有し、種同定と遺伝子型の解析を同時に行える可能性が示された。以上の結果は、分断化された景観における群集の時空間動態を理解する基礎となる。


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