| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-PA-044  (Poster presentation)

近縁ドロバチ2種は寄生者を介して競争しているか?野外操作実験による検証
Are two closely related species of eumenid wasps competing through parasitoids?: a field manipulation experiment

*辻井美咲(神戸女学院大学大学院), 遠藤知二(神戸女学院大学)
*Misaki TSUJII(Kobe Coll. Graduate School), Tomoji ENDO(Kobe Coll.)

オオフタオビドロバチは農地生態系を代表する管住性ハチ類の1種だが、近年、侵入種の可能性のある同属のオデコフタオビドロバチが同様の生息地で確認され始めた。これら近縁のドロバチ2種には、共通の天敵(ドロバチヤドリニクバエとノミバエ科の1種)が存在し、同所的に生息する地域があることが明らかとなっている。オオフタオビドロバチを中心とした相互作用系にオデコフタオビドロバチがどのような影響を与えうるのかを、野外操作実験を通して検証した。
調査は2019年に兵庫県高砂市の農地周辺の二次林で竹筒トラップを用いて行った。2種のドロバチは少なくとも2011年以降同地域で共存していることが確認されており、生息密度はほぼ同程度である。しかし、活動時期に違いがあり、オオフタオビドロバチの1世代目成虫と2世代目成虫の活動期をはさむ期間にオデコフタオビドロバチが活動する傾向があった。そこで、本研究では、オオフタオビドロバチ1世代目に寄生・羽化したものがオデコフタオビドロバチに寄生し、オデコフタオビドロバチ由来のものがオオフタオビドロバチ2世代目に寄生するという、寄生者の世代によるホスト種の交替を通じて見かけの競争が起こることを想定した。このことを検証するために、48の竹筒トラップのそれぞれにホスト密度と寄生者密度の2つについて高低の操作区を割り当てた野外実験を行った。寄生者の密度操作は、トラップから寄生巣内の囲蛹を除去および導入することで寄生者が野外で羽化できる状態にした。結果、野外操作実験では育室数、寄生率に操作区間で違いは見られなかった。また、オオフタオビドロバチ1世代目とオデコフタオビドロバチの営巣の有無によるオオフタオビドロバチ2世代目の寄生率への影響もみられず、見かけの競争を検出することはできなかった。母バチの対寄生者防衛反応や両種の生態的特性から、これらの相互作用系のあり方について検討する。


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