| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-PA-047 (Poster presentation)
人工林は、天然林に質は劣るもののコウモリの生息地としてのポテンシャルを持っている。海外では、人工林においてコウモリの活動量が林内に比べ皆伐地で大きく、採餌場所として利用している可能性があることが示唆されている。しかし、皆伐地におけるコウモリの活動量とその季節的変化に関する調査は、日本国内においてほとんど行われていない。そこで本研究では、皆伐地と人工林内におけるコウモリの活動量と種群の季節的変化を音声調査によって明らかにすることを目的とした。
筑波大学山岳科学センター川上演習林の、皆伐地3地点とカラマツ人工林内3地点にバットディテクター(SM4BAT)を設置し、2019年5月~9月にかけておよそ月1回各地点2晩~3晩ずつ音声調査を行った。録音した音声は音声のPF値・長さ・ソナグラムの形状によって、(A)キクガシラコウモリ属型、(B)ヤマコウモリ属型・ヒナコウモリ属型、(C)アブラコウモリ属型・クビワコウモリ属型、(D)テングコウモリ属型・ホオヒゲコウモリ属型の4タイプに分類した。また、一般線形混合モデルを用いて、皆伐によるコウモリの活動量への影響の統計解析を行った。
調査期間を通じて(B)タイプの活動量が多かった。皆伐の影響に関する解析結果では、(B)タイプと(C)タイプで皆伐地における正の影響が確認され、(A)タイプと(D)タイプでは皆伐による有意な影響は確認できなかった。このことは、皆伐地は特定のコウモリに対して活動量を増加させる効果があることを示している。また、今回の調査では(D)タイプのコウモリの活動量が少なかった。このような要因として、演習林とその周辺はほとんどが人工林であり、ねぐら資源が少なかった可能性が考えられる。今後は、コウモリが使用しているねぐらの位置を特定することや、種レベルの特定が必要である。