| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-PA-049 (Poster presentation)
蛾類は国内に約6000種が生息し、植食性を主として腐食や地衣類他、食性幅が広く多様な環境を反映する分類群として期待される。しかしながら、同定の難しさや生態が未解明な種を一定数含むため、指標生物としての利用は遅れている。また近年、草原生態系の衰退による草原性蛾類の減少が著しく、その保全を行う上で生息現状の把握が急務である。そこで、本州中部最大規模の半自然草原である霧ヶ峰高原における異なる植生・管理形態から成る草原6地区と森林2地区において群集調査と植生・立地環境調査を行い、組成と構造の把握、また環境指標性を検討した。なお本研究はJSPS科研費 JP19K06107の助成を受けたものである。
蛾類は未同定を除き、489種11186個体が確認された。各調査区の蛾類の優占種と食性別の個体数割合は群落の優占種や特性を強く反映した。また、各調査区間における蛾類群集の類似度係数(PS)は標高や推定距離と有意な負の相関、優占度(SDR₂´)を用いた群落の類似度(PS)と有意な正の相関があった。TWINSPAN解析の結果、全調査区は草原と森林環境に大別された。草原環境ではススキ・マルバハギ・ハシバミ優占群落(火入れ管理区)やススキ・オニゼンマイ優占群落(スキー場利用区)、標高の高いヒゲノガリヤス・ニッコウザサ優占群落等の群落の優占種の違いに応じて蛾類群集が分類された。また、種群分類においては構成種の出現傾向から主に草原性種群と共通種群、森林性種群に大別された。草原性種群は調査地区の標高や人為的攪乱の程度、共通種群は食性、森林性種群は植林の有無で細分類された。
上記の結果より、各調査区における蛾類群集の組成と構造は植生の連続性や標高差による植生帯や群落の構成種に対応することが指摘された。また、各調査地区における蛾類の個体数と環境要因との相関関係から、複数の環境指標種が提案された。