| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-PA-052 (Poster presentation)
ゴミムシ類は様々な環境に分布し、移動性が低いことから環境指標としての利用が期待される。しかし先行研究は大規模または単一な立地環境での事例が多く、小規模で様々な環境が近接した条件では少ない。そこで、本研究は信州大学伊那キャンパスにおけるゴミムシ類群集の知見を収集し、これらと立地環境との関係性を明らかにし、本分類群の環境指標性の有効性を考察することを目的とした。なお本研究は一般財団法人長野県科学振興会研究費助成金を受けて実施した。この場を借りて深謝の意を表す。
調査地は構内演習林等において近接した異なる植生環境の18調査地区とし、これらを森林および疎林、草地の三つの環境に分類した。群集調査と立地環境調査は2019年4月~11月に実施され、各調査区における各種の個体数等を用いて各環境間等で比較した。なお、各地区間の最大距離は847mである。また、TWINSPAN解析やDCAによる序列化を行い、本分類群の環境指標性について検討を行った。調査期間中、ゴミムシ類は1科24属62種8,709個体が得られた。群集の多様性は草地や疎林で高く、森林で低かった。次に、TWINSPAN解析等では近接した調査地区間においても異な立地環境間では、ゴミムシ類の群集構造は異なった。さらにDCA等の結果から、本群集と立地環境については光環境や土壌環境条件との関係性が示唆された。
以上、森林や草地等の異なる植生環境が近接する条件においても環境ごとにゴミムシ類群集の組成と構造は異なることが明らかとなった。よって、ゴミムシ類は近接した条件下においても環境指標として有用であることが示された。なお、環境指標の候補としては先行研究で言及されていたSynuchus属やHarpalus属、Amara属に加えて、新たにクロナガオサムシ等は森林、メダカチビカワゴミムシ等は草地の指標種として利用可能であると示唆された。