| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-PA-057  (Poster presentation)

草原性クモ群集における餌利用の季節動態:DNAメタバーコーディングによる食性解析
Seasonal dynamics of prey composition in grassland spider communities:diet analysis using metabarcoding

*鈴木紗也華, 東樹宏和(京大・生態研)
*Sayaka SUZUKI, Hirokazu TOJU(Kyoto Univ.)

生態系において、生物間相互作用は生態系の動態を左右する重要な要因である。なかでも被食-捕食関係は普遍的に存在し、生態系の構造を理解する上で重要な要素である。被食-捕食関係によって形成される食物網は非常に複雑であり、その詳細な記述には膨大な労力と時間を要する。近年、次世代シーケンサーの普及により、DNA情報をもとにした食物網解析が行われている。なかでもDNAメタバーコーディング技術を用いた研究は、一度に数百、数千のサンプルから餌生物の情報が得られるため、効率的に食物網構造を俯瞰することが可能である。
 本研究では、DNAメタバーコーディング技術を用いて、草原性クモ群集の食物網構造を明らかにすることを目的とした。またその食物網構造が季節を通じてどのように変化するのかについて研究を行った。京都大学生態学研究センターの圃場の一画を調査地とし、2018年6月から11月にかけて毎月採集を行い、1523個体のクモを対象にDNAメタバーコーディングによる餌生物の検出を行った。本研究により、14目にわたる多様な餌生物を捕食していることが明らかになり、季節によって餌生物の構成が変化することが示唆された。また腐食連鎖由来の餌生物も検出され、クモを介在して腐食連鎖から生食連鎖への栄養流入が起こっていることが示唆された。


日本生態学会