| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-PA-059 (Poster presentation)
寄生生活をおくる生物は自然界に数多く存在し、地球上の生物種の半数以上を占めるといわれている。琵琶湖においては、吸虫類や条虫類、鉤頭虫類、寄生性ケンミジンコなどを含む100種類以上の寄生虫種が報告されている。こういった寄生虫類は宿主に行動操作や形質変化をもたらし、生態系の食物網構造や物質循環に直接的、間接的に影響を与えていると考えられている。生態系の物質循環や食物網を明らかにする手法として、炭素と窒素の安定同位体比測定が広く用いられている。安定同位体による「捕食―被食」関係では栄養段階が上がると炭素と窒素の安定同位体比は濃縮されることが知られている。一方「宿主―寄生」関係では宿主を資源として活用しているにも関わらず、従来の「捕食―被食」関係とは異なる可能性が示唆されている。
したがって本研究では、安定同位体を用いて寄生虫類と宿主生物間の栄養関係を測定し、寄生虫類の栄養段階の解明を行う。
琵琶湖周辺水域で採集したコイ科魚類を解剖し、口腔、えら、鰾、消化管それぞれから寄生虫を採取した。宿主からえら、鰾、消化管、筋肉を取り出した。全てのサンプルを凍結乾燥し、粉末状にして測りとった。測定はEA/IRMSを用い、サンプルのδ13C、δ15Nを測定した。また微小な寄生虫を1匹ずつ測定するためにEA-IRMSを一部改良して測定を行なった。
ハスからは甲殻類(ケンミジンコの仲間)、単生類、吸虫類(幼生、成体)、鉤頭虫類が見つかった。採集された甲殻類、吸虫類、鉤頭虫類のδ13C、δ15Nを測定した。測定できた寄生虫類は全てΔ13C、Δ15Nにおいて負を示した。これらの結果について議論する。