| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-PA-060 (Poster presentation)
東南アジアの熱帯雨林地域の中心に位置するボルネオ島には8500種以上の蛾類が生息していると推定されている。ボルネオ島のごく限られた地域においては蛾類相に関する詳細な研究が進んでいるが、大部分の地域においては詳細な研究がほとんどなされておらず、蛾類相を地域間で比較するに足る十分な知見が蓄積されていないのが現状である。
そこで、本研究では、ボルネオ島内の蛾類群集の地理的変異を解明するために必要な基礎的な情報を蓄積することを目的として、ボルネオ島の北西部に位置するサラワク州内の広い範囲に散らばる4カ所の国立公園にある低地林3地点と山地林1地点の合計4地点においてライトトラップを用いた蛾類採集を行った。各地点において、2017年8月23日~12月8日の期間のうちの1晩、森林内の任意の場所にライトトラップを設置し、18:30以降の夜間に飛来する蛾を捕虫網などで採集した。
4地点から合計1788頭の蛾類を採集し、24科300属282種を確認した。採集個体数が最も多かった科はシャクガ科(587頭)で、次に多かったのがヤガ科(300頭)であった。科別の採集個体数が最も多かったシャクガ科に注目し、Bray-Curtis指数を用いて各地点間の出現した属構成の類似度を算出した。その結果、低地林の3地点間の属構成の類似度は、3つの低地林の各々と山地林1地点との間の属構成の類似度よりも顕著に高くなっており、水平距離にして約550㎞隔てられた低地林2地点間の属構成の類似度が、水平距離で約100㎞しか離れていない低地林と山地林の間の属構成の類似度より高いことが示された。今後は、調査地点を増やしながら各地点で異なった暦や微小環境における採集調査を繰り返しつつ、種レベルの分析にも着手して、より精度の高い地域間の群集比較を行う必要のあることが示唆された。