| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-PA-062 (Poster presentation)
近年コウモリが風力発電のブレードに衝突死するバットストライクが問題となっている。風力発電建設前の対策としてコウモリの存在や空間利用特性を把握することが求められるが、コウモリは夜行性かつ可聴域外の鳴き声で活動するため目視でのモニタリングは困難である。そこでコウモリの超音波から種を判別する音響モニタリング技術が要求される。本研究では、音響モニタリング技術の有用性を示すため、以下の2点を行った。まず30種の日本産コウモリの超音波から高精度で種判別を行う識別器を構築した。次に構築した識別器を用いて北海道北部にて録音した音源に対して予測を行い、専門家が視聴して識別した結果と比較し識別器の汎化性能を評価した。
識別器の構築に使用した音源は日本全国および韓国鎮川郡で録音した。音圧のburst検出を行い、スペクトログラムを抽出し、データベースを作成したのち画像分類のタスクで種判別を行なった。画像分類には畳み込みニューラルネットワーク(CNN)を用いた。CNNのモデルには計算負荷と精度が両立するMobileNetV1を採用し,10分割交差検証で識別精度を評価した。このときtrain dataに対してはCutout,Random Erasing,Salt and Pepper noiseの3種類の画像の水増し技術により拡張を行った。ハイパーパラメータはベイズ最適化により決定した値を採用した。続いて北海道北部にて録音した音源について、同様にスペクトログラムを抽出した後、構築した識別器に入力した。識別器が出力する予測種を属ごとにまとめ空間利用特性を評価し、専門家が視聴して識別した結果と比較した。
以上の結果より深層学習を用いることで、目視に頼らずコウモリの存在や空間利用特性が把握できる可能性を示した。この結果は音響モニタリングの一環としてバットストライク対策の基盤となることが期待される。