| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-PA-066 (Poster presentation)
枯死木分解は,生態系の物質循環において重要な生態機能である.しかし,これまで都市で枯死木分解にアプローチをした研究はない.そこで本研究では,都市から山地における森林で枯死木依存性節足動物の,1)林床枯死木からのサンプリングによる群集構造の解明と2)丸太設置実験による節足動物の糞量の定量解析を同時に行った.
群集構造の解明では,暖温帯における小面積都市林から大面積山地林までの都市化傾度に沿った様々な面積の9つの森林を選出した(0.005-55.779km2).サンプリングから得られた群集の種組成により調査地は3つの群集タイプに分類され,森林面積が分類に重要なパラメータとして選択された.小面積都市林に発生する群集では,種数が少ないが個体数は増加し,大面積山地林と比べ多様性が低下していた.しかし,材積当たりの個体数と種数は小面積都市林で有意に大きくなっていることが明らかとなった.以上から,都市化に伴う森林の縮小が,群集構造を変化させていることが明らかとなった.
丸太設置実験は,前述の9つの中から5つの森林を選出し,丸太にはシイタケのほだ木(コナラ材,直径10cm,長さ50cm)を用いた.設置期間は2年間である.本研究では接触の痕跡である糞と節足動物を同時にサンプリングした.糞量は面積間,群集タイプ間で有意な違いが見られなかったが,いくつかの調査地間で有意な違いが見られた.また,コクワガタ,キマワリ,エグリゴミムシダマシで糞量と有意な正の相関が認められた.調査地間での糞量の違いは,主にコクワガタの穿孔個体数の差によるものと考えられるが,同時にコナラの存在量の差も影響しているものと考えられる.
以上から,枯死木依存性節足動物群集は都市化による面積の縮小により構造を変化させているが,本研究からは枯死木分解への直接的な影響は検出できなかった.しかし,枯死木単位では,特定の種の定着が枯死木分解に大きな影響を与えることが示唆された.