| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-PA-067 (Poster presentation)
【背景】野外群集の生態学的弾性を評価するための新しい方法がBagchiら(2017)により考案された。この方法は対象となる群集を4類型に分類し、弾性の動態の特徴を定量する。生態学的弾性の定量は環境変動に対する生態系の応答様式を反映するため、生態系の理解と管理に役立つが、長期間の調査が必要なことなどが原因でその研究事例は少ない。そのため、生態学的弾性の知見を広げることは重要である。一方、群集の時間不変動性は短期間の調査によって比較的簡単に様々な測度で推定できる。したがって、時間不変動性から生態学的弾性が推定可能か確かめることは効率的な生態学的弾性の推定につながる。しかし、両者の関係を調べた研究例はほとんど無い。
【材料と方法】太平洋沿岸の6地域(北海道東部、北海道南部、三陸、房総、南紀、大隅)にまたがる141の岩礁潮間帯の固着生物群集を対象に、(1)生態学的弾性の類型組成の地域変異、(2)生態学的弾性の類型ごとの群集動態の特徴の地域変異、(3)時間不変動性(測度:群集アバンダンス、種数および種組成)の生態学的弾性の類型と地域の違いによる変異を16年の時系列データを用いて検討した。
【結果と考察】(1)生態学的弾性の類型の大部分は安定的な動態を示した。これは陸上植物群集の結果と一致していた(2)安定的な動態に類別された群集では低緯度地域では平衡状態への収束が早かった。(3)種組成の時間不変動性は北海道東部と大隅で高かった。この結果は海流の時空間変動が関連していることを示唆している。なお、時間不変動性の全測度と生態学的弾性との間には明白な対応関係は認められなかった。