| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-PA-068 (Poster presentation)
森林生態系において重要な役割を果たしている真菌類は、繁殖時に胞子産生器官である“キノコ”を形成する。このキノコは様々な動物に餌資源として利用されているが、真菌類もまた動物を胞子散布者として利用している可能性がある。真菌類の繁殖戦略を理解する上で、動物―真菌類の相互作用の解明は不可欠であり、キノコを訪れる多様な動物相が報告されてきている。しかし、訪菌動物の調査は日中の観察や、子実体に生息する幼虫の羽化個体の採集から行われることが多かったため、キノコで繁殖はせず夜間訪れる動物相の情報が乏しい。
そこで本研究では、時間に縛られない調査方法としてデジタルカメラのインターバル撮影によりキノコを訪れる動物を調査した。調査地で発生量の多かった,イグチ科、ベニタケ科、テングタケ科の子実体累計54本にカメラを設置して15分間隔で写真を撮影、画像に写った動物を目または科まで同定し、昼夜(日出⇄日入)で個体数を比較した。
撮影された計5253枚の画像から12目15838個体の動物が確認され、甲虫目(小型の甲虫6369個体、ハネカクシ科212個体)、双翅目ショウジョウバエ科(6221個体)、膜翅目アリ科(1853個体)、直翅目カマドウマ科(234個体)が多くキノコを訪れた。夜に観察されたのは12目5759個体で、画像一枚あたり平均個体数は昼の約半分程度(昼4.19個体±0.24 SE、夜2.03±0.09)だったが、夜にも多様な動物がキノコを訪れることがわかった。そのうち、オサムシ科やカマドウマ科、ゴキブリ目など複数の分類群で夜間にキノコを摂食するような行動もみられ、夜間の調査の重要性が示唆された。また、飛翔性の動物は夜よりも昼に多く(昼3.88±0.24、夜1.36±0.09)、徘徊性の動物は昼より夜に多く(昼0.27±0.02、夜0.63±0.03)キノコを訪れる傾向がみられ、昼夜で訪菌動物相の生態学的特徴が異なることが示唆された。