| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-PA-069 (Poster presentation)
宿主生物と細菌叢に関する研究は次世代シーケンス技術の普及にともない、広範な生物種に対しても実施できるようになってきた。近年では、湖沼における代表的な動物プランクトンであるミジンコ属(Daphnia)においても、その個体を宿主とする細菌叢の構造と機能に関する研究が盛んになってきている。しかし、ミジンコ属の細菌叢研究でこれまで用いられてきたのはモデル生物であるオオミジンコ(Daphnia magna)で日本国内には自然分布していない。したがって、日本の湖沼生態系における動物プランクトンと細菌の相互作用を明らかにしていくためには、まず国内に分布するミジンコ属の細菌叢を調査する必要がある。我々の研究室には日本各地で採取し、系統関係と日本列島への分布・拡散年代を推定したミジンコ(Daphnia pulex)の遺伝子型が多数継代飼育されており、宿主と細菌叢の関係を遺伝的及び地理的な背景を踏まえて研究することが可能となっている。そこで本研究では、日本に広く分布している2系統のなかから8遺伝子型を宿主として選び、その細菌叢が、宿主生理状態とともにどのように変化するかを明らかにすることを目指した。
実験にあたっては、まず、これまで同一条件下で継代飼育してきた各遺伝子型について、5日齢まで飼育した個体を餌が含まれていない培地に移し、絶食状態にさせた。この間、一定時間ごとに死亡後24時間経過するまで、それぞれの系統・遺伝子型のミジンコを採取した。採取個体からDNAを抽出し、16S rRNA遺伝子V3/V4領域をillumina Miseqによってアンプリコンシーケンスをおこなった。ここから得られたデータをもとにメタゲノム解析をおこない、宿主の系統・遺伝子型および生理状態の細菌叢への影響を議論する。