| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-PA-070  (Poster presentation)

コロニー内における捕食と営巣場所の選好性でコロニー形成を明らかにする 【B】
Revealing a process of colony formation: predation risk and preference for nesting location 【B】

*西條未来(総合研究大学院大学, LTP), 北村亘(東京都市大学, LTP), 沓掛展之(総合研究大学院大学)
*Miki SAIJO(SOKENDAI, Little tern project), Wataru KITAMURA(Tokyo City University, Little tern project), Nobuyuki KUTSUKAKE(SOKENDAI)

動物は集団になることで捕食圧を下げることができる。コロニーを作ることによって、親鳥が集団で捕食者に攻撃ができるため捕食されにくくなる。また周囲の個体数が増えるほど、自分が捕食される可能性を減らすことができる。そのため保全においてもコロニーの形成は重要な意味を持つ。しかしコロニー内の巣の増加は複雑であり予測が難しい。コロニーが捕食されにくい状態になるためには一定の巣が集まる必要がある。
本研究は、隣接する巣との距離・周辺の巣の密度と捕食率の関係を明らかにし、捕食率が下がる閾値を調べるためにシミュレーションを用いてコロニーの形成モデルを作ることを目的として行った。調査対象は、東京都大田区森ヶ崎水再生センター屋上の人工営巣地に形成されたコアジサシコロニーである。2019年5月のコアジサシコロニー形成期に、コアジサシの巣の位置、卵の数を毎日記録した。その結果、コロニーは中心の方が密度が高く、ほかの巣との距離が近い巣、コロニーの中心にある巣は捕食されにくいことが分かった。また、営巣の初期にできた巣ほど、より捕食されやすいことが分かった。これらのことから、密度の低い端の部分の巣が捕食されることにより、コロニーの中心部の巣密度が高くなることが示唆された。
親鳥が新しい巣場所を探すモデルを作り、コアジサシの営巣をシミュレーションにより再現した。モデルは以下のとおりである。1) 親鳥が中心に近い場所からランダムに新しい巣場所を選択する、2) その点から半径10m以内にある巣の数、近接する3つの巣までの距離によって巣場所の質を評価する、3) 端の巣から捕食される。その結果、コロニーの中心からの距離、周囲の巣の数、周囲の巣までの距離の3つの変数を入れると、実際のコロニーの巣の分布を再現することが出来た。コアジサシのコロニー形成は3つの変数があれば再現できる可能性があることを示した。


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