| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-PA-075  (Poster presentation)

餌を持っている時のカマキリの捕食回避行動:餌の重さ、体積、見かけの大小に着目して
Antipredator behaviors of mantises when holding prey : focusing on weight, volume and apparent size of prey

*櫟村祐喜(九大院・シス生), 粕谷英一(九州大学)
*Yuki RAKUMURA(Grad. school of Kyushu Univ.), Eiiti KASUYA(Kyushu Univ.)

 動物にとって採餌および捕食回避はどちらも重要である。また、この二つは一方に資源を充てればもう一方への資源が減るというトレードオフの関係にある。したがって、多くの動物では採餌と捕食回避に充てる資源の割合が自身の適応度が最大になるように状況によって異なることが考えられる。
 動物が餌を保持している時はすぐに餌からエネルギーを得られる反面、体の一部が制約されるため捕食者に襲われやすい。したがって、餌を保持している時の捕食回避は動物にとって重要である。
 本研究では、チョウセンカマキリの餌保持中における捕食回避行動について明らかにし餌の大きさにおけるどのような要素が行動に影響するのかを突き止めようとした。そのために、餌をカマキリに保持させた後にハシブトガラスの剥製である捕食者モデルを近づけた時の行動をビデオカメラで動画撮影した。
 餌として、質量、体積、見かけの大きさが大きい「大きな餌」、それらの三つが大きな餌よりも小さい「小さな餌」、質量は大きな餌と同じだが、体積、見かけの大きさが小さな餌と同じ「小さいが重い餌」の三種類を用意した。
 その結果、餌から口を離す、触角を伸ばす、モデルに対して避ける等の行動が見られた。よく見られる捕食回避行動として前脚を使った行動が知られているが、本研究では見られなかった。餌の保持に前脚を用いるため、それらの行動が抑制されたことが考えられる。
 また、餌の種類の間で行動の継続時間および回数に有意差は見られなかった。また、捕食者モデルの接近開始時点からモデルに対して反応するまでの時間についても、餌の種類の間で有意差は見られなかった。したがって、餌の大きさはカマキリの捕食回避行動に影響しないことが示唆された。このような結果になった原因として、用いた捕食者モデルによってカマキリが感知する捕食リスクが大き過ぎたこと、および用いた餌の大きさの違いが小さ過ぎたことが考えられる。


日本生態学会