| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-PA-077  (Poster presentation)

雄カマキリの交尾行動に対する性的共食いの影響
Eeffects of sexual cannibalism on male mating behavior in a mantid

*長田祐基, 高見泰興(神戸大学)
*Yuki NAGATA, Yasuoki TAKAMI(Kobe Univ.)

 性的共食いは雌に栄養的利益をもたらすが、雄の将来の交配機会を奪うため強い性的対立をもたらす。性的共食いのコストを回避するため、雄は雌を選択したり、慎重にアプローチするなど交尾前の適応を遂げたことが知られている。一方、共食いされた雄の交尾中、交尾後における適応については未だ研究が不十分である。発表者らのこれまでの研究で、交尾時に雌に食われたチョウセンカマキリの雄は交尾時間を延長し、射精量を増加させるらしいことがわかってきた。しかし、このような交尾行動調節のしくみについては未だわかっていない。
 昆虫は頭部神経節が交尾行動を抑制的に制御している。カマキリの性的共食いでは、しばしば雄の頭部が損傷するため、頭部神経節による抑制からの解放が、交尾時間の延長と射精量の増加という交尾行動調節を引き起こす可能性がある。あるいは共食いに伴う外傷が、交尾行動の変化をもたらす可能性もある。そこで本研究は、共食いされた雄のチョウセンカマキリの交尾行動調節と、それに関わる至近要因を明らかにすることを目的として、2つの仮説「頭部神経節による抑制的制御からの解放」と「共食いによる外傷刺激」を実験的に検証した。
 チョウセンカマキリの交尾ペアを4つの処理区(通常、性的共食い、雄頭部切断、雄片前脚切断)に分け、交尾時間、精包付着時間、受精嚢内の精子数を測定した。その結果、交尾時間は頭部を損傷した処理(共食いと雄頭部切断)において有意に増加し、「抑制からの解放仮説」が支持された。精包付着時間は処理区間で有意差が見られなかった。一方、受精嚢内の精子数は通常よりも性的共食いで有意に増加したが、他の処理間には差が見られなかったため、仮説の判別には至らなかった。ただし、交尾時間と精子数の間には相関が見られなかったため、交尾時間の延長と射精量の増加は異なる要因によって制御されている可能性が示唆される。


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