| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-PA-079  (Poster presentation)

社会寄生種ヤドリウメマツアリのホスト転換について
Host change in social parasitism of Vollenhovia nipponica

*近藤薫平, 大河原恭祐(金沢大学)
*Kumpei KONDO, Kyosuke OKAWARA(Kanazawa Univ.)

永続的社会寄生種であるヤドリウメマツアリはワーカーカーストを消失しており、女王はホストのウメマツアリの巣に侵入し、その労働力を利用して繁殖を行なう。しかしホストのウメマツアリコロニーには系統的に異なる短翅型女王と長翅型女王集団があり、東日本から西日本にかけて分布するヤドリウメマツアリ個体群は短翅型女王のコロニーに寄生し、長翅型女王のコロニーへの寄生は非常に稀である。この事は長翅型女王集団にはヤドリウメマツアリの寄生に対する抵抗的性質があることを示唆しており、石川県金沢市近郊の長翅型女王集団ではヤドリウメマツアリのブルードに対する排除行動があることも検証されている。しかし、演者らは2018年に両方の女王型のコロニーが分布する山形県酒田市飛島で、短翅型女王コロニーだけでなく長翅型女王コロニーにもヤドリウメマツアリが高頻度で寄生していることを発見した。社会寄生に対する抵抗的性質の発達の過程と機構を調べるため、この個体群を利用した交換飼育実験を行った。飛島の長翅型女王コロニーに寄生していたヤドリウメマツアリ女王を石川県金沢市の長翅型女王コロニーに導入し飼育したところ、22-113日間生存はしたものの発生してきた新成虫にヤドリウメマツアリの繁殖虫はほとんど含まれていなかった。また反対に金沢市に生息するヤドリウメマツアリを飛島の長翅型女王コロニーに導入した場合、22-113日間生存し33-70日後には1-11個体のヤドリウメマツアリの新繁殖虫が確認された。この事から飛島の長翅型女王集団は寄生に対する抵抗的性質を持っておらず、特に巣仲間やブルードに対する識別の精度が低いことを示唆している。さらにヤドリウメマツアリ女王への排除行動、ワーカーのブルードや卵塊への監視行動、ヤドリウメマツアリ女王の産卵行動の比較データから侵入や識別機構についても考察する。


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